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Ⅹ線天文衛星『ASTRO-H』 [科学系よもやま話]

JAXAのパンフレットダウンロードに、先週新たにX線天文衛星『ASTRO-H』、陸域観測技術衛星2号『ALOS-2』、第一期気候変動観測衛星『GCOM-C1』のパンフレットが、追加されました。

今日から、それぞれの衛星についてご紹介してみようと思います。

まずは、X線天文衛星『ASTRO-H』です。
次期X線国際天文衛星(リンク)』

ASTRO-Hは、次期X線国際天文衛星の名前の通り宇宙のX線観測を行なうことを目的とした科学衛星です。国際の文字が入っているのは、日本国内だけでなくNASAをはじめとする世界中の大学・研究機関と協力して研究・開発が進められているからです。つまりASTRO-Hは単に人工衛星の名前というだけではなく、X線天文衛星を中心とする世界規模のサイエンスコミュニティの名前なんですよ。

過去の科学衛星の中では最大となる総重量2.4t、望遠鏡伸展後の全長14mのASTRO-Hは、2013年度にH-IIAロケットでの打ち上げが予定されています。

X線天文学は比較的新しい学問分野で、最初に観測されたのは、1962年、リカルト・ジャッコーニ、ブルーノ・ロッシらが観測ロケットによって月による太陽からの X線反射を捉えられたのが始まりだそうです。この時、全天で一番明るいX線源Sco X-1を偶然発見したことで、人類は初めてX線を出す天体の存在を知ったんだとか。これが、X線天文学が誕生した瞬間です。

X線は大気で吸収されてしまうので、宇宙に到達して初めて観測できる電波です。そのため地上ではX線を出す天体があるなんて誰も知りえなかったというわけです。ガリレオの時代からの可視光による観察と違って、ほんの50年前の出来事なんですね。本格的な観測が開始されたのは衛星打ち上げが増えた1970年代以降。日本はこのX線天文学の黎明期から参加して、はくちょう(CORSA-b):1979年,てんま(ASTRO-B):1983年,ぎんが(ASTRO-C):1987年,あすか(ASTRO-D):1993年,すざく(ASTRO-E2):2005年と、実に5台のX線天文衛星を打ち上げてるんです。

ところで、こうして衛星の名前を並べると、ASTRO-B,C,D,Eと続いてASTRO-Hです。当然、ASTRO-AとかF,Gってあるの?って思う人もいらっしゃるかもしれません。実は全部あります。ASTRO-Aは、1981年に打ち上げられた太陽観測衛星『ひのとり』です。ASTRO-Fは、昨日このブログでもご紹介した赤外線天文衛星『あかり』です。そしてASTRO-Gは、計画中の電波天文衛星の名前なんですよ。天文衛星に順番にアルファベットを振っているので、X線天文衛星だけ見ると、ASTRO-B,C,D,E,Hとなるだけなんです。

また、正確に言えば赤外線天文衛星『あかり』はASTRO-E2で、2機目。初代のASTRO-Eは、2000年2月10日にM-V-4ロケットで打ち上げられましたが、残念ながら1段目ロケットの故障で衛星軌道に乗ることができず、打ち上げに失敗してしまったんです。
失敗といえば、日本初の赤外線天文衛星は上述のように、失敗して二号機がリベンジを果たした訳ですが、日本初のX線天文衛星もそうなんです。1976年に打ち上げ失敗したX線天文衛星CORSAの再挑戦が、『はくちょう(CORSA-b)』。CORSA-bの-bは2機目だからつけられたんですね。

閑話休題

次期X線国際天文衛星(ASTRO-H)ですが、ハッブル望遠鏡が可視光を捉えるのに対して、X線を捉えるのがX線天文衛星です。可視光もX線も電磁はというくくりでは同じですが、その性状はかなり違います。

そもそもX線を効率よく観測する為には、普通の望遠鏡と同じように大きな口径からX線を一点に集める必要があります。可視光ならレンズ、大型の場合は凹面鏡を使った反射望遠鏡で一点に収束させますよね。でもX線はレントゲン撮影に使われる事からもわかるように、透過力が高いので普通のガラスのレンズや凹面鏡で集めることができません。では、どうやって一点に集めているのでしょう?ここに技あり!(WBS風にw)

実は、X線望遠鏡は全反射と呼ばれる現象を利用して一点に集めるそうです。全反射とは、屈折率の大きい物質から小さい物質に光が入ろうとしたときに起きる現象で、入射角が一定の角度より浅い場合に起こります。この原理を使って、X線も非常に滑らかに磨かれた金属にごく浅い角度で入ってくると、全反射を起こしてわずかに進行方向を変えます。ASTRO-Hでは、これを利用してX線を一点に集めているそうです。

実際の鏡筒は、表面を金でコーティングした円筒形の鏡がバームクーヘンのように同心円上に並べんだ物。鏡の表面は凹凸の高さが数百万分の1mm(つまり1ナノよりも一桁小さい)以下という非常に高い精度で磨かれているんだそうです。 更に、ASTRO-Hでは、鏡の表面に多層の反射膜をコーティングすることで、これまで透過力が高く反射させることが難しかった、より高い波長域の硬X線まで観測できるようにしたんだとか。
詳しい説明はコチラ(『透過力の高いX線を集める(リンク)』) ASTRO-Hの活躍を期待しましょう。って、予算削減で開発中止なんて事態になると、活躍もくそもないですけどね^^; 参考資料: 『次期X線国際天文衛星(リンク)』 『宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部・宇宙科学情報解析研究系教授 海老沢 研HP(リンク)』
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北海道大好き人間

レントゲン=X線を発する天体があるということは、宇宙空間では放射線をもろに浴びることになりますね。
病院のレントゲン検査技師はもちろん、医師や看護師も、勤務(機械を操作する)時間に制限があるみたいですし。胸元にあるペン型の物で放射線をどのくらい浴びたか(被曝量)わかるみたいです。
by 北海道大好き人間 (2010-06-14 23:18) 

optimist

北海道大好き人間 さん、こんばんは。
放射線を扱う場合には、必須ですよね。私も学生時代に放射化学を受講していた時にはバッジをつけていました。
宇宙空間ではシールドしても、地上とは比較にならない被爆量となりますから、癌などの可能性が高くなっちゃいうようです。
by optimist (2010-06-14 23:34) 

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